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ホッケームーブメント

近藤聡史(平成8年卒)

p80

 創部90周年を無事迎え、本当におめでたく、諸先輩への感謝と喜びをまずは申し上げたいと思います。

 偉大な諸先輩に比べると歴史を語る資格などある訳がない若輩者であり、そちらは先輩方におゆずりし、私の現在の立場から少し違った視点でホッケー界の現状と私なりの将来展望を述べさせていただければと思います。

 現在、私は東京オリンピック・パラリンピック競技組織委員会(TOKYO2020)にホッケースポーツマネージャーという立場で非常勤の勤務をしています。スポーツマネージャーは最終的にはホッケー競技の成功に対する責任を負う立場であり、重責を感じているところです。本大会2年前から常勤で勤務する予定ですが、既に多くの業務があります。会場の立地、運営、施設設計等既にIOCをはじめとする関係箇所との相談、調整が既に始まっています。

 ご存知のとおり、東京オリンピック・パラリンピック大会の規模、内容、予算等に注目が集まっており、会場をどこにするかといった内容の報道も多くあります。報道のキーワードに「レガシー」という単語も多くみられます。レガシーとはIOC憲章には「長期にわたる、特にポジティブな影響」と定義されていますが、レガシーをいかに良い形で後世にバトンタッチしていくかも重要なことです。レガシーの例としてわかりやすくところだと、会場、交通、道路の整備といった有形なものがあります。その他には雇用、保安レベル向上、市民意識の向上、環境社会への進展、スポーツ意識の向上といったいわば無形のものもあります。

 ホッケーに関すれば最も大きいレガシーはやはり東京都内に国際大会が開催可能なホッケー競技場ができるということでしょう。前回の東京五輪で駒沢に立派なホッケー場ができたのですが、ちょうど天然芝から人工芝に代わる過渡期というタイミングであったため、大会後にホッケーで活用される機会が激減し、ホッケーとして良いレガシーが残せませんでした。今回はホッケー界としてもそのような負のレガシーとなるようなことはできません。そのため、大会後の国内大会の誘致は当然のこと、国際大会の誘致も検討しているところであります。

 無形なレガシーとしてはホッケーを始めてみようという機運(=movement)が盛んになり、その結果としてホッケーを生涯にわたって楽しむ人々が増えていくことがあります。現在の日本ホッケー協会(JHA)への選手登録人数は10,604人(2016年度)であり、この数字はここ15年間ほど増減がありませんが、ホッケー会場地がほぼ決定した後から、地元の品川区や大田区をはじめとして地域のちびっ子へのホッケー教室が開催され始めました。将来のオリンピアンを合言葉に活動中です。これは一例ですが、すでに良いレガシーに向けた動きが始まっているということです。ホッケーの知識を持っている人は少ないので、関東の大学生や若い卒業生が協力しています。また、卒業後の活動機会も増やしていきますが、残念ながら日本社会においてスポーツの位置づけはまだまだ低いと個人的には感じています。卒業後、会社に入ってスポーツの大会に参加するので2-3日休ませて下さいと気軽に言い出せる会社は少ないと思います。これが卒業後のホッケー離れの一因と感じています。東京オリパラ大会をきっかけにスポーツムーブメントを加速させ、社会の中でのスポーツの位置づけを高め、少しでもスポーツに触れ、スポーツを通じた交流や人格形成ができる場を創出していきたいと考えています。

 ホッケーに関わるというのはプレーだけではありません。観戦、審判、大会運営、教室開催、監督指導と多岐にわたります。ホッケーを楽しむ人が様々な形で携わっていくことで、良い相乗効果ができ、それが新たなホッケームーブメントを呼び、良いレガシーとして残っていけるように、是非みなさんも何らかの形でホッケーを楽しんで下さい。そのための活動の仕組みや場をできるだけ提供できるようにしていきたいと思います。きっと違った出会いや喜びがあると思います。

 現役生の卒業後や既に卒業された方も東京大会での活動は当然のこと、活動(=活躍)の場所がわからないということであれば、遠慮なくご連絡頂ければTOKYO2020、JHA理事の立場でもありますので、いろいろな場所をご紹介いたします。皆さんでホッケームーブメントを広げましょう。それがきっと京大ホッケー部の躍進に跳ね返ってくると私は信じています。