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選手宣誓

 

太田秀樹(昭和41年卒)

p57

 たとえば高校野球(だけではありませんが)などの開会式で、選手代表による選手宣誓が行われます。ひとり代表だけが誓うのではなく、選手各自が誓いを述べているのと同じ意味をもつものです。

 敵を殺したり傷つけたりするのが、戦闘技術です。その戦闘技術から発展してきたと言われるのが、スポーツです。相手を殺したり傷つけたりせずに、試合をして競い合う。これがスポーツをスポーツたらしめるギリギリの条件です。このギリギリの条件を、「かならずその条件に従うことを誓います」と大きな声で言わせて選手に誓わせる。選手宣誓がもつ重要な意味がこれなのだと、私は思っています。

 「我々はスポーツマンシップに則って、正々堂々と戦うことを誓います。」が、ご存じの通り誓いのことばです。それ以外に選手が誓わなければならないことなど、何もありません。それ以外の誓いの言葉など、口にすべきでありません。「ひょっとしたら自分ができないかもしれないこと」など、決して誓うべきでありません。スポーツマンシップとは何か。辞典に寄れば、それは ”fair, generous and polite behaviour, especially when playing a sport or game” です。

 

 昔のことなのであやふやな記憶なのですが、楽友クラブという京大ホッケー部のOBが作っている社会人クラブがありました。ある年に西日本から2チーム、東日本から2チームの4チームで社会人日本一を決めるトーナメントがありました。

 私たちは西日本の決勝戦まで勝ち抜きました。決勝戦は楽友クラブ対天理クラブでした。私たちは前半1-0で勝っていましたから、ひょっとしたら天理に勝てるかもナと私は思いました。でも後半に3点入れられて、1-3で負けました。その後半戦は、大変なラフプレーの連続でした。ああいう状況の試合をさせないために、選手に宣誓をさせるのですが、そのトーナメントでは選手宣誓があった記憶がありません。

 冒頭に高校野球のことを書きました。最近は選手宣誓で、まことにヘンなことを言うからです。「我々はスポーツマンシップに則って、正々堂々と戦うことを誓います。」だけでよいのです。それ以外に選手が誓わなければならないことなど何もなく、それ以外の誓いの言葉など口にすべきでありません。

 

 以上が私の寄稿文です。せっかく高校生が一生懸命宣誓しているのに、そんなに角を立てなくてもいいじゃないか。こういうお考えもあろうかと思いますが、あえて書かせていただきました。むかし農学部のグランドに下駄履きで入って、古沢先生に「神聖なグランドになんと言うことを!!!」と叱られたことがあります。先生のお言葉通り、スポーツは神聖なものです。