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阪大ホッケー部OBからのメッセージ

阪大ホッケー部OB会東京支部長

京谷 光高(昭和51年卒)

p48-49

 京都大学ホッケー部創部90周年 おめでとうございます。大阪大学ホッケー部OBを代表して一言寄稿させていただきます。私ども大阪大学ホッケー部は 昭和28年創部ですので貴校から遅れること約四半世紀でありますが、貴校は関西の国公立大学兄貴分という位置づけで関西ホッケー界では歴史と伝統のある一目おかれる存在であり続けておられます。今後もこの状況は不変だと思いますので是非 関西大学ホッケー界の牽引者として幅広く活躍されんことを期待しています。

 さて 私は貴校90年の歴史のちょうど半ばごろ(昭和47年~50年)何度か対戦し、苦楽を共有したものです。解剖学者の養老孟司氏が言うように、記憶が嘘をつく ということがあるかもわかりませんが私の記憶を少したどってみます。当時、入学した頃の阪大ホッケー部は弱小軍団で、リーグ戦、七帝戦等ほとんど勝ち試合がなく、負け試合直後の約一時間の反省会が定常化され、手段と目的をはき違えた状態 すなわち反省会が主目的で、そのための手段として試合に参加するというおかしな状況でありました。その結果 プレーにも覇気がなくチームの雰囲気がなんとなく暗く、気分はブルーになり、次の試合にも負けるという負け犬根性がはびこり、いわゆるチームとして負のスパイラルに陥った状態でした。一方 京都大学は 関西1部に定住され 私の目からは、百姓一揆のような阪大チームの攻撃ではなく、パスをつないでフォーメーションを組立て組織的な攻めをするスマートなチームであり、上級生もなんとなく阪大と比較すると、持っている雰囲気がカッコよく、これが四半世紀の伝統の差なのかなと感心もし、憧れと目標のチームでもありました。いつかは対等なチームになりたいと思っていたのが1年生の時でした。

 2年生では 前年の、さながら試合をすることは修行僧のように我々に与えられた行であり、苦痛をもたらすものとの暗い意識から吹っ切れて、ホッケーを皆で楽しむと同時に、技術力を高め勝利することにより自己実現を果たすのだというように気持ちが前向きに変化していきました。さらに陣容も1年生が多数入部し、ワイワイガヤガヤ活気にあふれ、阪大第2期黄金期の黎明期であったと思います。この一年でのチームの変化は、新キャプテンが打ち出した「プレーを楽しもう」という方針がチーム員に浸透したからですが、そのきっかけは 前年秋季リーグでの阪大ー神戸大戦で、我がチームのFB選手がボールをクリアするためにヒットした際、振り下ろしたステイックのヘッドがレバースタックルしてきた相手主将の頸部に当たり、頸動脈損傷即心肺停止という、ホッケー界始まって以来の試合中での不慮の事故死に直面し、なにかしら みんなの意識が変化したからだと思っております。当日私も試合に出ており、目の前で起きた惨事がしばらく信じられなくて茫然としていました。亡くなった人は私もよく知る高校の先輩でしたのでなおさらでした。余談ですが その事故以来 神戸大学とは毎年 秋に定期戦を実施しております。

 新生阪大ホッケー部は 春季リーグ戦で2部の2位となり1部との入れ替え戦に臨んだのですが、なんと相手は京都大学。我々は 当たって砕けろ、失うものはないという気持ちで、関西大学千里山のグラウンドで対戦しました。阪大の田んぼを均したようなグラウンドに慣れている我々は、固い真っ平らなグラウンドに戸惑い、攻め込まれる時間が長く苦しい展開でしたが、守備を固め数少ないチャンスを生かし、カウンターで伝統の(?)百姓一揆的攻撃により勝利しました。当たり前のことですが先ずは守備力強化が大事であるとの再認識をさせられた試合でもありました。その時の私の印象は、これで貴校と対等になったという感慨ではなく 京都大学はこの程度で負けるチームではないはずだ、もっと強くあってほしいという複雑な気持ちでした。その後 4年生では春季、秋季とも同じ2部、1部で対戦し、ほぼ互角の戦いであったと記憶しております。

 今後も、わが阪大ホッケー部と貴校は、常にライバル視しながら切磋琢磨し続ける運命であると思っておりますが、貴校には今や女性の活躍する時代を先取りし、女子ホッケー部が誕生しているとのこと。阪大にはいまだその機運がないので、うらやましい限りですが、女子ホッケー界のさらなる発展にも一翼を担っていただくことを切望いたします。

 ところで 私も卒業後40年以上経ちますが、貴校卒業生の方たちとお仕事で、また遊びを通じて多数の方とお付き合いさせていただいておりますが、他の大学とは一味違う雰囲気をお持ちの方が多いと感じております。潜在的能力と豊富な知識は最高学府を出ておられるので十分お持ちなのは当たり前ですが、それに裏打ちされた問題解決能力と胆力の備わった人が多いという印象です。やはり自由闊達な校風と進取の気風が、歩まれる人生のなかで醸成され、胆識のある人材を輩出するのでしょうね。これから先、不透明な世の中を切り拓いていく人材はこの胆識のある京都大学出身の方だと確信しておりますので、現役、OBのみなさん ホッケー界のみならず社会での幅広い活躍を期待しております。阪大OBに身を置くものの、数十年来の京都大学一ファンである私からの願いでもあります。