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ホッケー部創設十周年にあたりて

前總長 小西 重直

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 橋本左内先生は二十六歳、吉田松蔭先生は三十歳で斬首された。其の活動の期間は何れも十年にも充たなかつたのであるが、其の精神的影響は實に永遠的なものである。これは死生を超越して至誠を以て國の爲に盡されたからである。學術の研究であつても、スポーツであつても至誠のこもらざるものは價値のないものである。否な至誠心がなければ研究も出来るものではない、スポーツの眞の生命に徹する事も出来無い。至誠は人間性の本質であつて、其の具體的な基本相は敬、愛、信の精神である。これ等の精神なくしては一切の文化は創造されず、發展も不可能である國家社會の成立維持発達も困難である、人生の一切の價値生活は皆これ等の精神に基づくものである。スポーツは人生に於ける價値生活の一つである。至誠、愛、信の精神の作用せざる所には眞のスポーツを成り立ち得ない。また發展もなし得ない。スポーツの規約を尊重し、利害の念を超越して、協同的に三味的に熱中する崇高的精神は不誠意なるもの非敬、非愛、非信なるもの到底なし得ざる所である。ホッケー部が創立十周年を迎えたるは實にこの貴い精神が十年の間部員の間に顯現し體驗されたことを物語るものであつて實に意義深き十年である、私はこの十年の創業的歷史は必ず永遠な生命となつて將來の活動に作用する事を信ずるものであるが、これを十分に生かすには、また部員諸兄の今後の努力にまたねばならない。十年関の發展を祝すると共に、今後の健闘を祈る次第である。